ヒト血漿型グルタチオン・ペルオキシダーゼ(PGPx)は、その活性中心にセレンを含む特異な蛋白であり、腎臓で組織特異的に産生され血液中へと分泌される。本研究では、PGPx遺伝子の発現調節機構を解明するために、PGPx遺伝子の単離、構造解析、遺伝子座位の決定、さらには、産生細胞の同定を目的に研究を行った。 その結果、ヒトPGPx遺伝子を含むコスミド・クローンの単離に成功し、その全塩基配列を解明できた。また、5'上流転写調節領域についても約1kbにわたる塩基配列を決定した。今後、このプロモーター領域とレポーター遺伝子(CAT遺伝子など)とを結合させ、培養細胞に遺伝子導入して発現を検討するいわゆるプロモーター解析を行う。その際、このPGPx遺伝子に特徴的である腎臓での組織特異的発現を決定する転写調節因子に焦点を絞って実験を計画する。また蛍光In situ hybridization法により、ヒトPGPx遺伝子座位が第5染色体長腕バンド32と決定された。今後、この領域にマップされる遺伝病とPGPxとの関連について検討を行う所存である。抗PGPxモノクローナル抗体の作製については、意外にも抗原の調製に手間が必要であり、ようやく大量の抗原を作製できる段階にたどりつけた。今後、初期の目標通りにマウスにリコンビナントPGPx(C)を免疫し、モノクローナル抗体を作製する。抗体が得られたならば、早急に酵素抗体法などにより、PGPx産生細胞を決定する。
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