研究概要 |
アルツハイマー病(AD)の原因と考えられている老人斑の形成機序を解明する目的で、種々の脳組織(AD、4;AD疑、2;脳血管障害、5;脳腫瘍、6;亜急性硬化性全脳脳炎、1;放射線照射後白質脳症、1;非病変脳、6;胎児脳、3)について、免疫組織化学的検討を行った。その結果、AD脳では対照脳に比べて明らかに多数のβA4アミロイド蛋白、変性tau蛋白、α1アンチキモトリプシン(ACT)、インターロイキン6(IL-6)補体後期成分の斑状の沈着が検出された。しかし、文献上に報告のあるIL-1、TNFα、免疫グロブリン沈着、は認められず、リンパ球(T、B)、NK細胞の局所浸潤も観察されなかった。βA4、tauの沈着は鍍銀染色で検出される老人斑に一致するものが多く、IL,-6はβA4の沈着した老人斑以外にも多数の斑状染色を示した。この所見はこれまでに報告されていず、老人斑のごく初期の病変を把えている可能性が極めて高い。また、典型的な老人斑の形成に先行して認められるものであるから、βA4や変性tau沈着に重要な役割を果たしているものと推測された。このIL.-6は血中から流出して沈着したものかあるいは局所で産生されたものかを同定するためにin situ hybridization法を用い、IL-6mRNAの発現を検討したが未だ安定した実験条件が得られず、引き続き検討している。また、IL-6の産生は炎症刺激等により生じたIL-1やTNFαの作用を受けて誘導されることが知られているが、上記の結果はこれに反するものであることから、IL-6の異常産生の有無も検討する必要があると考えている。さらには、IL-6がβA4の沈着や変性tauの沈着を誘導するのか否かも、in vitroの実験で検討する。
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