(1)染色体のセントロメア領域に特異的な反復DNAプローブを用いたfluorescence in situhybridization(FISH)よるinterphaseの核での染色体の検出に関して、通常の病理検査のために(10%ホルマリン固定・パラフィン包埋)処理された材料では、プローブの浸透性の問題から細胞単離、スメア標本を用いての検出が適することがわかった。この方法でも病巣内のmicrodissectionを行なえば、FISHの結果と調理組織像との対応は可能である。この方法で大腸癌を検索した結果、(1)進展の初期にあると考えられる粘膜内の顕微測光上二倍体の細胞でしばしば染色体の数的変化がみられること、(2)主に浸潤部にみられた異倍体の腫瘍細胞については染色体数を二倍体部分の細胞と比較しながら解析すると、二倍体細胞からDNAの多倍化(retraploidization)を経て異倍体細胞が生じること、がわかった。ras遺伝子の点突然変異は検索した症例の約半数にみられたが、いずれもプロイディ、染色体数の異なる領域の細胞で変異パターンは一致していた。 (2)組織切片を用いてのFISHでは、Amex固定によるパラフィン切片(20μm)上で良好なシグナルが得られ、レーザ走査顕微鏡を用いてカウンティングした。セントロメア領域に特異的な反復DNAプローブの中にはシグナルサイズに個人差があるが、この方法ではシグナルサイズの違いも検出できた。症例を選べば特定の染色体では、父性・母性由来を区別できLOHの解析も可能である。 (3)Amex固定によるパラフィン切片と凍結切片上で抗セントロメア抗体によるセントロメアの免疫組織化学的検出を行ない、レーザ走査顕微鏡を用いてカウンティングした。線維芽細胞、胃の印環細胞でいずれも平均45〜46のシグナルの検出できた。
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