研究概要 |
平成4年度の研究では以下の研究成果を挙げることができた。1.担癌宿主において白血球増多症、高カルシウム血症を合併発現するヒト腫瘍Xenograft株(LJC-1-JCK,OCC-1-JCK,OTUK,LC-4-JCK,JC-21-JCK,LC-22-JCK,Lu61,QG-56)8株を同定した。これらヒト腫瘍Xenograft株において両腫瘍随伴症候の原因としてのG-CSF遺伝子およびPTHrP遺伝子の発現を解析した。両遺伝子の合併発現は8株のXenograft全てに認められ、白血球増多症、高カルシウム血症の合併が密接に関連していることが明らかになった。2.臨床的に極めて悪性の経過をたどり末期に末梢白血球増多症と高カルシウム血症を随伴した肺癌症例より新たにG-CSF産生肺癌Xenograft株(LC-GP-JCK株)を樹立した(阿部、中村 et al.,1992)。このLC-GP-JCK株においてもPTHrP遺伝子の合併発現が認められ、白血球増多症と高カルシウム血症の密接な関連が示唆された。また、この症例を含めG-CSF産生を確認できた癌症例は例外無く早期に再発転移しており臨床的悪性度との関連が示唆された(Sato,H.,Nakamura,M.et al.,1993)。これらの腫瘍株におけるG-CSF遺伝子およびPTHrP遺伝子の構造を通常のサザンブロット法によって解析したが、少なくとも遺伝子増幅、再構成は明らかではない。 今後は新たに樹立されたこの腫瘍Xenograft株LC-GP-JCKを主として解析を進め、特にG-CSF遺伝子およびPTHrP遺伝子の非翻訳領域の比較検討をすることにより本研究の主目的である両遺伝子の合併発現機序を明らかにする。同時に、従来の研究でG-CSF産生との関連が示唆されているras癌遺伝子の点突然変異を検討し、PTHrP遺伝子の合併発現への関与を検討する。
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