研究概要 |
人体材料の臨床病理学的ならびに免疫組織化学的検索:軟部組織の組織球性増殖性疾患,特に良性線維性組織球腫,腱鞘巨細胞腫および悪性線維性組織球腫について光顕的に検索した。同時に各種の単球-組織球マーカーおよび間葉系細胞マーカーを用いて,前記の人体材料を免疫組織化学的に検討した。その結果,従来線維性組織球性腫瘍fibrohistiocytic tumorといわれていた病変の多くは間葉系細胞の増殖が主体であるが明らかになった。しかし,腱鞘巨細胞腫では組織球性細胞の関与も大きいことがわかった。 細胞培養系の確立:悪性線維性組織球腫から培養細胞系を樹立し,種々の分化抗原および細胞マーカーについて検討したところ,腫瘍細胞は組織球類似の機能を有してはいるが,真の組織球ではなく,facultative histiocyteであることがわかった。 染色体分析:本疾患の新鮮手術材料から,分裂中期の細胞の核型を分析したところ,症例ごとに種々の異常を示した。一部の例では多数のマーカー染色体とともに,del(11)(q23),del(17)(p11),add(18)(q23)など複雑な異常が認められた。 細胞動態の分析:新鮮手術材料およびパラフイン切片について抗PCNA/cyclinおよびMIB-1モノクローナル抗体で染色して増殖細胞の分布を調べたところ,間葉系の増殖細胞の核は高頻度に標識されたが,反応性の正常組織球はほとんど標識されなかった。これによって本病変の本態は間葉系細胞を主体とする増殖性病変であることが明らかになった。またDNAフローサイトメトリーで,aneuploidyを示した例はそうでない例よりも予後が不良であった。
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