研究概要 |
腎糸球体の微小循環系を構成する血管内皮細胞とメサンギウム細胞及びその細胞外基質の相互作用について検索してきた。細胞培養系ではヒト.ラットの腎糸球体より分離したメサンギウム細胞と血管内皮細胞としてはヒト臍帯静脈内皮細胞,ラット大動脈内皮細胞を用いている。ヒト及びラット糸球体由来の内皮細胞の分離,培養には成功していない。細胞外基質ゲル内培養法により(1)血管内皮細胞は血管類似の索状構造,(2)メサンギウム細胞は塊状に集団を形成し,細胞突起を出して連結,(3)両細胞を混合培養すると血管内皮細胞の索状構造物にメサンギウム細胞が突起を出してまとわりつく所見が得られた。いづれもプレート上の2次元の培養とは異なり,より生体内に近い形態をとる。メサンギウム細胞増殖に対する細胞外基質の影響をみてみると(1)基底膜成分を主としたゲルは細胞増殖抑制,(2)間質コラーゲンのうちタイプIは増殖促進,タイプIIIコラーゲンは抑制,(3)ヘパリン,ヘパラン硫酸は抑制的に働くことが判明した。次にメサンギウム細胞の増殖調節(特に抑制)にTGF-βが関与しているかを検討した。(1)メサンギウム細胞培養上清中にTGF-βが存在し,(2)抗TGF-β抗体存在下で細胞増殖促進がみられ,(3)放射性ラベルTGF-βの結合試験よりメサンギウム細胞のTGF-βレセプターの存在が明らかとなった。ラット・メサンギウム細胞に対する単クローン抗体(1-22-3)を用いた対応抗原の検索(western blotting)ではThy-1関連抗原であることが再確認されたが胸腺細胞表面に表出される抗原構造が同一か否かははっきりしない。1-22-3抗体は補体の存在下で培養メサンギウム細胞を障害死させることも明らかとなった。in vivoで投与した際のメサンギウム融解反応をin vitroでも解析しうるモデルである。1-22-3対応抗原発現の遺伝子レベルでの解析は技術的な理由で遅れている。高糖のメサンギウム細胞機能への影響も検討中である
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