研究概要 |
増殖刺戟を受けている標的細胞では変異原・癌原物質により染色体(CA)は増加する。CAの染色体間分布の時間的変動は化学構造の如何を問わず、CAの染色体間の分布は一定の法則によって支配されている。又、CAの染色体内分布も変異原・癌原物質の如何にかかわらず同一部位にCAは分布し、染色体レベルでの作用については一定の共通性を示した。増殖刺戟及び抑制がある場合には染色体間分布はそれほど変動しないが染色体内分布では切断部位の分布においてpeakの出現が増殖刺戟がある場合には強調されるが、増殖抑制がおこった場合にはpeakの出現は明瞭ではない。細胞増殖刺戟があると姉妹クロマチッド交換(SCE)も著明に上昇し、増殖抑制があるとSCE頻度は減少した。SCE部位の染色体内分布で、SCEは同一部位に集中し、CAの集中する部位に一致した。染色体Gバンド上における変異原・癌原物質による染色体切断好発部位分布については、貧血ラットにDMBAを投与した6時間後のラット骨髄細胞の染色体標本をトリプシン処理によりGバンドの染色を行ない,顕微鏡下で観察し,染色体切断の部位をバンド上で特定した。結果は図5のとおりである。計測法では鋭く集中していた切断のピークがGバンド法では両脇のinterbandにsplitして読みこまれることが多く,分染法によるプロット法にも技術的な問題点のあることがうかがわれた。従って、DMBAの6時間のラットの系ではやはりバンドの部分即ちNo.1染色体では1q22-32(1q31),No.2染色体では2q13-22(2q21),2q24-26(2q25),2q34-41(2q41)がbreak pointであると考えている。CAとSCEは増殖ないし抑制刺戟により同様の変化を示す事が明らかとなり、関連した現象である事が推察される。これは増殖中の細胞で休止状態ではヒストンないし非ヒストン蛋白で防備されているDNAが無防備の状態になっている可能性を示唆している。
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