研究概要 |
これまでのところ,プラスミドpSV‐neoのトランスフェクションにより,おもに成熟マウス後根神経節由来のシュワン細胞株が多数得られている。いずれも蛍光抗体法によりS‐100,laminin,CNPase,Poが検出され、シュワン細胞の生化学的特徴を十分に有していた.これら細胞株に対する制御因子として,dibutyryl cyclic AMP,forskolin,phorbor esters,platelet derived growth factor(PDGF)‐AA&‐BB,acidic&basic fibroblast growth factor(a&bFGF),transforming growth factors‐β1&β2,dimethyl sulfoxide,retinoic acidをそれぞれ培地に添加し細胞計測を行ったところ,これまでにdbcAMP,forskolin,retinoic acidにより増殖の抑制が認められた. 一方,正常成熟マウス・シュワン細胞に対する上記諸因子の影響をbromodeoxyuridine(Brdu)標識,S‐100/Brdu蛍光抗体法二重染色により判定したところ,牛胎児血清(FBS)存在下では,PDGF‐BB,bFGF,TGF‐β1,β2がそれぞれ濃度依存性に増殖促進効果を有していた.その際,forskolinの共存により濃度依存性に上記増殖因子の効果を抑制した.他方,無血清人工培地下では,PDGF‐BB,bFGFが増殖促進効果を有していた.しかし,TGF‐β1&β2の効果は明かでなく,その増殖効果発現には牛胎児血清中の未知の因子の共存が必要と考えられた. 他方,初代成熟マウス・シュワン細胞を10%FBSにて長期(4-6ヶ月)培養し,不死化シュワン細胞株を得ることに成功した。これまで3株を樹立し,いずれも蛍光抗体法でS‐100,laminin,CNPase,Po陽性であった.現在,これら細胞株に対する上記細胞制因子の反応性について検討中である.また,1細胞株の培養上清に初代シュワン細胞に対する増殖効果を認めており,同株が既知あるいは未知の液性増殖因子を産生・分泌していると考えられ,現在検索中である.
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