実験的アレルギー性神経炎の炎症病理を理解する上で、組織の抗原提示細胞を同定することは、極めて重要な研究課題の一つといえる。本研究では、特に末梢神経系に於いて、自己免疫性T細胞と相互作用をする組織の抗原提示細胞を同定するために、牛座骨神経由来、塩基性ミエリン蛋白P_2のアミノ酸、53-78に相当する合成ペプチドを用い、これに特異的に反応するLeuis ラット由来クローン化T細胞株Phi-2を確立した。T細胞抗原認識の基本的性質である主要組織適合拘束(MHCRestrition)によりPhi-2T細胞は同種同系Leuis ラットに対して起〓性をもつが、同種異系DA ラットに対してはアレルギー性神経炎を〓起する事は出来なかった。しかるに、致死量放射線照射DA ラットにLeuisの骨髄細胞を移植したものでは移植後数ケ月を経てPhi-2T細胞による実験的アレルギー性神経炎に感受性を示すようになった。これは造血細胞の置換過程でLeuis骨髄細胞に由来する細胞がDAラットの末梢神経組織に定着した後、末梢神経組織の共通抗原P_2蛋白を処理し、Phi-2T細胞に対して組織の抗原提示細胞としての役割を果す事が出来た為と考えられる。モノクローン抗原体を用いた免疫組織化学の方法でも骨髄キメラDAラットの末梢神経組織中にLeuis ラットの骨髄細胞に由来するマクロファージのマーカーを持つ一群の細胞を血管周囲に固定する事が出来た。
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