研究概要 |
土壌伝播寄生虫感染症の多くは安価で駆虫効果の高い広域駆虫薬の出現によってコントロールが容易になってきた。鞭虫症についてもmebendazoleが開発され,臨床的に用いられている。しかし,完全駆虫が困難であることと薬価が高いことから,より安価でかつ駆虫効果の高い抗鞭虫薬の開発が望まれている。 ネパールの生薬Emberia ribesは従来から条虫駆除薬として用いられてきたが,最近,鞭虫に対しても効果があると報告され注目を集めている。我々は,この生薬中に含まれる有効成分を解析するために,まず,イヌ鞭虫(Trichuris vulpis)あるいはネズミ鞭虫(T.muris)を用いたin vitroの実験系を開発した。この系を用いて解析し,E.ribesのエーテル抽出部よりembelin(4%)とともに,リノール酸およびパルミチン酸のグリセッドを分離した。熱水抽出部にも殺鞭虫効果がみられるが,本文画にはembelinは含まれておらず,glycerol,fructose,gallic acidが單離された。このうち,強い殺鞭虫作用がembelin(MLC=0.01mg/ml)とgallic acid(MLC=0.5mg/ml)に認められ,E.ribesの殺鞭虫活性成分は複数存在することが明らかとなった。また,T.muris感染マウスを用いてin vitroでの駆虫効果を検討し,embelinが2mg/kg,3回投与で70-90%の駆虫率を示すが,その駆虫様式はmebendazoleとは異なり遅効型であることを明らかとした。 また,E.ribesを水と煮沸するとembelinは変化をうけるが,この変化物質を精製し,それが2量体型構造を有することを明らかとした。本物質を含め,embelin以外のものの駆虫効果の検討は,次年度の課題の一つである。
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