1.ネズミマラリア・熱帯熱マラリア原虫を用いた試験官内溶血作用の検討: ネズミマラリア感染マウス赤血球と熱帯熱マラリア感染人赤血球に、グラミシジンを添加すると、濃度依存的にマラリア感染赤血球のみが溶血し、明らかにマラリア感染赤血球膜に特異的な表層蛋白との相互作用による溶血反応の結果と考えられた。 2.ネズミマラリアをモデルとした治癒効果に関する検討: 感染マウスに一日一回2mg/kgの腹腔投与を5日間行なうか、感染後直ちに腹腔投与を開始し4日間投与した場合、顕著な治癒効果が認められた。 3.浸透圧保護試験と電顕観察: ポリエチレングライコール4000の添加で、グラミシジンの溶血作用はほぼ完全に阻止された。従って、グラミシジンによる溶血が膜に37A以上の穴をあけ、ヘモグロビンが溶出するものと判明した。しかし、電顕観察では、説明し得る開口部は認められなかった。 4.熱帯熱マラリア原虫に対する影響: 熱帯熱マラリア原虫の増殖性と付着性に対する影響を調査した結果、低濃度のグラミシジン添加より完全に増殖が抑制された。また、熱帯熱マラリア原虫感染赤血球をメラノーマ細胞と共培養し付着させた後、グラミシジン処理区では明かに付着した感染赤血球の脱落が観察された。 5.グラミシジンの作用機構に関する検討: グラミシジンをリガントとしたアフィニティクロマトグラフィーによって分析を試みた結果、SDS-PAGEで約30KDの単一な蛋白が回収された。正常赤血球膜には見られないマラリア原虫に特異的な蛋白とグラミシジンが結合し、開口部を形成するものと思われた。
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