細胞内寄生原虫に対するワクチン開発への基礎的研究を目的とし、トキソプラズマ原虫感染細胞がトキソプラズマ原虫感染細胞特異的細胞傷害性T細胞にHLA class I分子で抗原提示する機序、特に宿主細胞内におけるトキソプラズマ原虫抗原の動態について解析を行った。トキソプラズマ原虫を感染させたヒトB細胞腫を急速凍結法、凍結置換固定法、ディープエッチング法を用いた超微形態学的解析の結果、トキソプラズマ原虫外膜と宿主parasitophorous膜の融合、およびチャンネル様構造形成が起こることが明らかとなった。そこでトキソプラズマ原虫を生体pH指示剤(BCECF)で生体蛍光染色Workstation(ACAS)およびcytoflowmetry(FACScan)で解析した結果、感染後1-2時間後にトキソプラズマ原虫由来のBCECFが宿主細胞内に移行することが示された。そこでトキソプラズマ原虫感染細胞が細胞傷害性T細胞にトキソプラズマ原虫抗原を提示する際に機能するHLA class I分子を特定するために抗HLA class I privateモノクローナル抗体を用いて検討した結果、HLA-A2がトキソプラズマ抗原提示に機能していることが示された。次にトキソプラズマ原虫感染細胞によって提示されるペプチドT細胞エピトープを解析した。トキソプラズマ原虫感染細胞を超音波で破砕後、trifluoro-acetic acklにより抽出し、逆相高速液体クロマトグラフィーにより分画した。このペプチド分画をトキソプラズマ原虫感染細胞特異的傷害性T細胞の標的細胞にpulseすることによって、エピトープの検索を行ったところfraction 29に含まれることが分かった。fraction 29に含まれるペプチドエピトープのアミノ酸解析の結果、N末端から2番目にLeu、3番目にIle、9番目にMetあるいはPheの疎水性アミノ酸を持つオリゴペプチドであることが示された。
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