研究概要 |
下記の2項目について概要を述べる。 (1)YACプローブの染色体マッピング 筑波大・基医の田中真奈実氏が,マンソン住血吸虫のゲノムDNAをYAC(Yeast Artificial Chromosome)ベクターで,クローニングすることに成功した(未発表)。このベクターは,数百KbpからMbpまで,大型サイズのDNA断片をクローニングするために開発されたものであり,ヒトゲノムプロジェクトでも主要なテクニックとなってきた。しかし,この方法は,染色体上でのマッピングによって,クローニングされたDNAの局在部位を確認しながら進行させる必要がある。それゆえ,YACプローブ用の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法の改良が急務であった。幸に,大型サイズDNAの標識法およびエタノール沈殿法の改良によって,YACプローブのFISHに成功を見た(未発表)。現在,全クローンの局在部位を分析中である。これによって,住血吸虫類のゲノムプロジェクトも可能になった。全染色体のContigクローニングが完成すれば,住血吸虫類におけるDNAレベルでの解析が急速に進むと思われる。また,染色体進化に関しても,直接的に染色体変化のメカニズムが解明できる。 (2)日本住血吸虫(Sj)およびマンソン住血吸虫(Sm)のキアズマ頻度差 減数分裂染色体での遺伝子マッピング解析中に,SjとSmのキアズマ形成が顕著に異なることを発見した。そこで,先ず,両種雄の減数分裂移動期のキアズマ頻度を,銀染色法によって検出した。Sm(プエルリコ株)のキアズマ頻度は,15.4±4.3(n=55)であるのに対し,Sj(山梨・久留米株)のそれは,3.0±2.6(n=62)であった。この頻度差が,両種の種分化にどのように関わっているかは明らかでないが,分子レベルの分析では,SjはSmよりも種分化速度がかなり早いことが明らかになっている。
|