研究概要 |
ブユのオンコセルカ感染にたいする感受性の種間差をあきらかにするために、大分と熊本の牛舎において毎月採集したブユ成虫の解剖を行い、仔虫の取り込みとその後の発育の有無について調べた。その結果、大分においては、S.arakawae,S.bidentatumおよびS.aokiiの3種でXおよびYの両タイプの仔虫がとりこまれていた。また、S.nikkoemseではYタイプの仔虫のみが摂取されていた。熊本では、S.arakawaeとS.bidentatumでは両タイプが、S.kyushuense とS.aokiiでYタイプのみが取り込まれていた。また、これらの4種とS.quinquestriatum とからセタリアの仔虫がみいだされた。フイラリア陽性ブユのうち胸部に未発達の仔虫を有していたかどうかについて、気温条件が仔虫の発育に適している5月から11月までに採集されたブユについて調べた結果、大分ではS.bidentatumとS.arakawaeが、また熊本ではS.bidentatumが、いずれもYタイプの未発育仔虫を有していた。これらの結果から、ブユの感受性の違いはS.kyushuenseでは仔虫の摂取の段階で、一方、S.bidentatumなどでは仔虫を摂取した後の発育の段階において発現されていることが示唆された。仔虫の実験感染は、S.bidentatum,S.aokii,およびS.arakawaeについておこなったが、Xタイプの仔虫の発育は前2種に、Yタイプの発育はS.arakawaeにみらえた。ニワトリヌカカから見出されたフィラリア幼虫は、発育第一期において酸性フォスファターゼの活性部位がブユから見いだされた幼虫における活性部位と異なったことから、第一期幼虫の大きさの違いとあわせて、牛に寄生するオンコセルカとは別の種と考えられる。牛舎で採集された他の7種のヌカカからはフィラリア感染は認められなかったことから、牛のオンコセルカにたいする感受性は無いものとおもわれた。
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