研究課題
これまでに合計206名の糞線虫保有者をピルビニューム・パモエート(PP)、サイアベンダゾール(TB)、アルベンダゾール(AB)で治療し、その治療効果をATLウイルスの混合感染との関連を調ベた。 その結果、ATLウイルス非感染者での治癒率が、PP治療で60% (45/75)、TB治療で71.4%(2/7)、AB治療で80%(12/15)であったのに対し、ATLウイルス感染者での治癒率は各々32.4%(22/68)、55%(11/20)、47.6%(10/21)で、前者の治癒率にくらベて著明に低いことを確認した。 これら治療対象者で治療後に依然として感染が持続していることが判明したグループについて、各種免疫学的検討を行い、それらとATLウイルス混合感染の有無との関連を調ベた。その結果、糞線虫に対する血清抗体値は、抗-HTLV-1抗体陽性者において特に低下傾向にあるとは認められなかった。他方、血清総IgEレベルや末梢血の好酸球比率はATLウイルス感染者の間でやや低い傾向を示したが、統計的な有意差はなかった。これらの結果は、治療前に検討したものではなく、治療に対して抵抗性の示したグループについて検討したものである。このため、一部の感染者に対して治療前における検討もおこなってみた。その結果、やはり血清抗体値と治療抵抗性の間に関連は認められず、血清総IgE値と治癒効果の間にも関連を認めることができなかった。しかし、末梢血の好酸球反応は一般に治療抵抗性を示したグループにおいて低いという、予想に反した結果が得られた。また、ATLウイルス感染者の間で高率に異型リンパ球の出現を認めたが、異型リンパ球の有無と治療効果の間にも現在のところ有意の関連性を認めるに至っていない。
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