研究課題/領域番号 |
04670240
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
冨田 隆史 国立予防衛生研究所, 昆虫医科学部, 研究官 (20180169)
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研究分担者 |
原田 志津子 東京大学, 医科学研究所・遺伝子解析施設, 助手 (10218646)
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キーワード | チカイエカ / コガタアカイエカ / カルボキシエステラーゼ / アセチルコリンエステラーゼ / 有機りん剤 / 殺虫剤抵抗性 / 遺伝子増幅 / 分子生物学 |
研究概要 |
有機りん剤の標的酵素の1つであるカルボキシルエステラーゼ-B(CE-B)の構造遺伝子が約32倍に増幅したことにより、同剤抵抗性を獲得したチカイエカ新宿系を用い、cDNAプローブと幼虫唾腺の多糸染色体との蛍光in situハイブリダイゼーションを行った。増幅した遺伝子は、殺虫剤感受性系統における同遺伝子座の近傍にあたる部位にクラスターをなし、extended chromosomal region(ECR)を形成していた。このECRはDAPIやオルセインに対して負の染色性を一様に示した。一方、同プローブを使った新宿系統のgenomic Southern hybridizationにより、CE-B構造遺伝子を含むampliconのサイズを少なくとも20kbと推定した。これらの結果から、唾腺染色体上で1つのinter-bandに本来存在していた構造遺伝子とその隣接配列が、DNA増幅の課程でその周囲にそれらのコピーを蓄積し、一様な負の染色性を示すECRを形成したものと思われる。増幅したCE-B遺伝子を包含するECRの形成は、薬剤標的蛋白遺伝子の増幅により耐性を獲得した哺乳類培養細胞株において頻繁に観察されている増幅DNAの「染色体内にとどまりECRを形成する」1つの存在様式と酷似しており、力の生殖細胞においても共通な遺伝子増幅の機構が働いていた可能性を示唆する。 アセチルコリンエステラーゼ(AchE)の薬剤感受性の低下によって有機リン剤抵抗性を獲得したコガタアカイエカ富山系のゲノムDNAから、AchE遺伝子の一部をPCR法で得た。これをもとに、ゲノムDNAのミニライブラリーを調べ、AchE遺伝子の第1から第5エクソンを含む8.4kbpの断片をクローニングした。ゲノム上のエクソンの配置は、ショウジョウバエのそれと良く似ていて、数kbの長いイントロンを持っていた。アミノ酸のホモロジーは、ショウジョウバエとは約70%であるのに対し、ハマダラカとは93%という高い価であった。活性中心の6アミノ酸は富山系AchEにも保存されていた。コンピューターによるタンパク質の2次構造解析を試みたところ、富山系AchEにのみ見られる構造が予測されたことから、薬剤感受性の変化との関連を議論できる可能性が示唆された。
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