研究概要 |
前年度報告したNocardia brasiliensis IFM075株から得られたアンスラサイクリン系の新物質であるSO-075R1について、生物活性を検討した。その結果、SO-075R1は、これまで報告されれているアンスラサイクリン系の抗生物質と異なり、明らかに毒性が低い化合物であった。しかし、マウスのL1210細胞に対する抗癌活性を検討した結果、活性は認められなかった。一方、HSVに対するin vitroでの抗ウイルス活性を検討したところ、抗ウイルス活性が観察された。SO-075R1と同時に生産される微量成分を単離して、その構造研究を進めた。その結果、これらの新たに分離精製された化合物M-3,M-4およびM-13-1は、これまで報告のない新規化合物であり、特に還元型のアンスラサイクリン化合物としては、天然物としては、はじめての報告であり、新たな生合成および分解過程の中間体を考える上で興味深い化合物であることが明らかになった。また、SO-075R1の不活化に関する研究は、本物質は、糖が脱離し、さらに環元されて活性を失う機構の存在も新たに確認され、SO-075R1の生産菌における自己耐性機構に関しても新たな知見が得られた。 またこれらの研究を通して病原性Nocardiaが毒性物質を含め、興味ある生物活性物質の生産源であることが明らかになったことより、当研究分野に同定依頼された患者由来株について生物活性物質の生産源として研究を進めた。その結果、現在までに新たに肺ノカルジア症の患者から分離された株が、抗真菌活性物質を生産していることがこれまでの研究で確認された。本物質は極性の極めて高い水溶性の物質であり、その構造研究が進められている。また、その他患者由来の病原性ノカルジア株について検討した結果でも、さらに数株において興味ある生物活性物質が生産することが認められており、それらの活性成分について抽出および単離作業を進めている。
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