1.65-kDaリン酸化蛋白質(pp65)の遺伝子クローニングと全塩基配列の決定:(1)pp65の精製法は既に確立し、報告した。精製pp65をリシルエンドペプチダーゼで分解して得た二つのペプチドのアミノ酸配列を決定し、この配列を基に、すべての可能なコドンを含むDNAを合成した。(2)このオリゴDNAをプローブとし、一方、マクロファージのmRNAから逆転写酵素を用いて作製したcDNAライブラリをテンプレートとして、PCR(polymerase chain reaction)法で二つのペプチド間のDNAを増幅した。この増幅DNAをプローブとしてノーザンブロット解析を施行した。pp65をコードしているmRNAは、マクロファージの他、T細胞やB細胞などのリンパ球、骨髄細胞、胸腺などに認められた。あわせて、抗pp65抗体を用いたウエスタンブロット法を行い、pp65蛋白質の発現は骨髄や胸腺では少なく、成熟造血系細胞で多いことを明らかにした。(3)上記増幅DNAをプラスミドに組み込み、ジデオキシ法でシークエンスした。次にこれを基に、ダイレクトシークエンス法にてpp65 cDNAの全塩基配列を決定した。得られた配列を、データベースで既知の配列と照合すると、ヒトL-plastinという最近Linらによって報告された新種の蛋白質と高い相同性があり、マウスのL-plastinであるとが確定した。 2.pp65をリン酸化する蛋白質リン酸化酵素(PK)の同定:(1)pp65のリン酸化アミノ酸の種類を高圧濾紙電気泳動で決定すると、セリンであった。(2)[^<32>P]-正リン酸でラベルし、LPSで刺激したマクロファージからpp65を精製し、^<32>P-セリンを含むペプチドを分離した。^<32>Pで強くラベルされるペプチドは一つで、そのアミノ酸配列を決定した。(3)その配列(Lys-Ile-Ser^*-Phe-Asp-Glu-Phe)を既知のPKがリン酸化するモチーフ配列と比較するとcAMP依存性PK(Lys-X-Ser^*)、プロテインキナーゼC(Lys-X-Ser^*)、カゼインキナーゼII(Ser^*-X-X-Glu)などがpp65をリン酸化するPK侯補となるが、前後の配列を総合的に考えると、カゼインキナーゼIIが最も可能性が高いと考えられ、この点についてさらに詳しく検討する予定である。
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