この研究の目的は、世界中で広く用いられてきたBCG生ワクチンに様々な難病の抗原タンパク質遺伝子を入れ新しい有用なワクチンを開発することである。既にM.kansasiiの菌体外分泌タンパク質の一種であるα-抗原遺伝子にエイズgagタンパク質p17のエピトープを繋いでBCG菌に入れ発現させることに成功した。 より効率的な発現系を開発するため、BCG菌Tokyo株において大量に分泌されるMPB70遺伝子の発現機構を解明することにした。MPB70は同じBCG菌でも株間において発現の仕方が異なる。この違いの原因を明らかにするためMPB70を殆ど分秘しないBCG菌Pasteur株を対照として用い、両者にMPB70遺伝子が保持されているか否かをサザーンハイブリダイゼイション法で調べた。その結果、両者共遺伝子のN末端もC末端も共に有していることが明らかになった(投稿中)。次いでこの遺伝子のプロモーター部位とシグナルペプチド部位に焦点を当て、MPB70遺伝子の発現と分泌のしくみを明らかにしていきたいと考えている。 M.aviumは日和見感染菌としてエイズ患者から検出されることでよく知られている。この菌のα-抗原遺伝子をクローニングした。M.aviumのα-抗原遺伝子の塩基配列は他の抗酸菌とよく似ていることが確かめられた。この遺伝子を細分割して発現させその抗原性を調べたところ、少なくとも二ケ所にB-cellエピトープ活性があることが明らかになった(Infection and Immunity印刷中)。
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