研究概要 |
この研究の目的は、生菌ワクチンとして世界中で広く用いられてきたBCG菌に様々な難病(エイズ、マラリア等)の抗原タンパク質遺伝子を移入し、新しい有用な組換えBCGワクチンを開発することである。既に、M.Kansasiiの分泌タンパク質の一種であるα・抗原遺伝子に、エイズgagタンパク質p17のエピトープ部分をつないでBCG菌に入れ融合タンパク質を産生させることに成功している。 日和見感染菌としてエイズ患者から検出されるM.aviumから、多くの抗酸菌に共通なα・抗原の遺伝子を分離した。その遺伝子の抗原性部分を調べ、少なくとも六ヶ所にB・cellエプトープ部分があることを明らかにした(Infection & Immunity, 1993)。 より効率的な発現系を開発するため、BCG菌Tokyo株において大量に分泌されるMPB70の遺伝子発現機構を解明することにした。MPB70を殆ど分泌しないBCG菌Pasteur株を対照として用い、両者にMPB70遺伝子が保持されているかどうかを調べた。その結果、両者共遺伝子のN末端もC末端も共に有することが明らかになった(Biomedical Letters, 1993)。次にMPB70遺伝子のプロモーターとシグナルペプチド部位に焦点を当て、MPB70の遺伝子発現と分泌の機構を調べる目的で、上流域を含む1.6kbのDNA断片を得、MPB70遺伝子が発現していることを確認した。現在さらに短くした断片を作製中である。 エイズに続いてマラリアの抗原タンパク質遺伝子を導入した組換えBCG菌を作るため、マラリアCSタンパク質のcytotoxic T cellエピトープのアミノ酸配列からDNA断片を合成した。これをMPB64遺伝子に繋いだ後、BCG菌を形質転換し、菌体内での発現を確認した。この組換えBCG菌をマウスに接種し、T・cellの活性化を調べたところ賦活化は見られなかった。現在その原因を追及している。
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