研究課題/領域番号 |
04670250
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
平田 陸正 岩手医科大学, 医学部, 講師 (20048359)
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研究分担者 |
下村 有子 岩手医科大学, 医学部, 助手 (90206251)
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キーワード | リポ多糖(LPS) / エンドトキシン / LPS結合蛋白 / LPS中和 / 組織因子 / 酸化窒素 / 腫瘍壊死因子 / エンドトキシンショック |
研究概要 |
感染症、とくにグラム陰性菌感染症においては内毒素(リポ多糖=LPS)が、内毒素血症や内毒素性ショック、さらに播種性血管内血液凝固(DIC)など凝固障害の発現に大きく関与している。これらの発症を抑制するためには抗生剤投与などに加え、LPSを直接無毒化ないし中和することが最も重要と考える。我々は、ウサギ顆粒球からLPSと結合しこの活性を中和する新しい18kDa蛋白(CAP-18)を精製し、cDNAクローニングによって全一次構造を決定した。この蛋白のC-末端37個のアミノ酸からなる7kDaのペプチド(CAP-7)は、LPS刺激によるマクロファージからの組織因子(TF)、一酸化窒素(Radical nitrogen)、およびTNFの産生を抑制した。CAP-7と同一構造をもつ合成ペプチドはE.coli、S.typhimurium、Ps.aeruginosa、K.pneumoniaeなどのグラム陰性菌にIC_<50>=40-70nMで、グラム陽性菌であるS.aureus(メチシリン感受性および耐性菌)に対してIC_<50>=150-200nMで抗菌活性を示した。LPSとガラクトサミンをマウス腹腔内に投与し、5分以内にペプチドを静脈内に投与した結果、LPS対照群では85%のマウスが死亡したが、ペプチド投与群では死亡率が43%と有意に減少した。このペプチドはin vivoにおいてもLPSと結合しこの致死活性を中和することが観察された。ペプチドは脳組織由来のトロンボプラスチン(TP)によるin vitroでのプラスマの凝固を抑制した。また、TP静脈注射で100%のマウスが死亡したが、ペプチドの同時投与で57%が生残し、坑凝固活性をもつことが認められた。種々の合成ペプチドを用いて検討した結果、LPSとの結合能の高いペプチドほど抗菌活性やLPS中和活性が高く、ペプチドの構造と活性とに相関がみられた。 このペプチドは細胞由来の生理的物質であり、種々の感染に対する防御蛋白として機能していることが示された。感染症や内毒素性ショックの予防、治療薬へと応用したい。
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