研究概要 |
外膜透過孔の性状や機能に関する研究の多くは,大腸菌やサルモネラ菌を材料に行われてきた。これらの細菌の主要なポーリン孔は、同一サブユニットにより形成されるホモオリゴマーである。本研究の主題の一つである緑膿菌のD2ポーリン孔も見かけの分子量(Mr)45kDaの蛋白質3分子により形成されている。一方,本研究の過程で精製したセパシア菌のポーリンオリゴマーは,2つのポリペプチドに解離することが報告されている。本年度は、このポリペプチドを分離精製し免疫学的な研究を行った。得られたマウス抗血清や単クローン抗体により次の結果を得た。(1)これらのサブユニットは,マウスに対して明らかな抗原性を発揮した。(2)セパシア菌の外膜中に存在する主要な透過孔は,分子量の異なる2種類のサブユニット(37kDaおよび27kDa)から形成されるヘテロオリゴマーであった。(3)このヘテロオリゴマーは,3分子の36-kDaサブユニットと1分子の27-kDaサブユニットから構成されていた。(4)これらのサブユニットは,ともにその分子の一部分が細胞表面に露出し,中でも36-kDaサブユニットは,膜貫通性であった。(5)精製した36-kDaサブユニットから再構成したオリゴマーは,27-kDaサブユニットが存在しなくても,人口膜中で透過孔を形成した。 今後,緑膿菌のD2蛋白質に対する抗血清および単クローン抗体を作製し,セパシア菌との類似性を明らかにすることを計画している。また,セパシア菌のポーリン蛋白質をコードする遺伝子のクローニングとそのDNA配列を決定することにより,既に報告された緑膿菌のD2蛋白質をコードする遺伝子のその配列と比較することにより,ポーリン孔の基本的な構造を明らかにする。
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