[目的]私は、EBV誘発に際しスイッチとして働くBZLF1遺伝子のプロモーター(約550bp;Zp)の中に、抗体処理による誘発刺激に直接応答する領域(領域2)、2次応答領域(領域3)、応答抑制領域(領域1)が存在すること、刺激後に誘発の起こる細胞の割合は感染細胞株間で異なり、この違いがZpの誘発刺激への応答性と関連している可能性を報告してきた。今回、各種ウイルス材料からZp領域をクローニングし、各Zpの塩基配列および誘発刺激に対する応答性を比較検討した。[材料と方法]各種材料からのZp領域のクローニング:PCR法を用い、10種類のZp領域をCAT遺伝子上流にクローニングした。誘発刺激への応答性の測定:各ZpプラスミドをAKATA細胞ヘトランスフェクトした後、細胞表面の免疫グロブリンを抗体でクロスリンク(抗体処理)してウイルス複製を誘発し、プロモーター活性の変化をCATアッセイにより測定した。[結果および考察]1.AKATA株由来のZp(AK-Zp)の塩基配列をB95-8株由来のZp(B95-Zp)の塩基配列と比較したところ、7bpの塩基置換が同定された。他のウイルス株あるいは臨床材料由来のZpと比較したところ、B95-8株EBVのZpは、他のZpに比べ塩基置換が多いことが明かとなった。領域2、3は、10種類すべてのZpで保存されていた。2.AK-ZpとB95-Zpの誘発刺激に対する応答性を比較したところ、AK-Zpの応答性が有意に高かった。AK-ZpとB95-Zpのキメラを構築して誘発刺激に対する応答性を比較した結果、領域1および領域2、3周辺の変異双方が応答性の違いに影響していることが示唆された。他の材料由来のZpの応答性には、B95-Zpと有意な差はなかった。感染しているウイルスのZpの応答性の違いが誘発の効率の違いに反映されている可能性が考えられる。
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