HTLV-I感染による合胞体形成を中和試験に用いるため、効率良く合胞体を形成する細胞株の組み合わせをスクリーニングした。その結果、HTLV-I非感染MOLT4細胞とHTLV-I感染ILT-8M2細胞の組み合せが大型の合胞体を24時間で形成した。MOLT-4細胞上には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のレセプターであるCD4が発現されていることは既に知られており、HIV感染細胞と混合培養することにより合胞体を形成する。従って、HTLV-IレセプターとHIVレセプターがMOLT-4細胞上に共存することになる。この両者の関係を明らかにするため、HIV持続感染MOLT-4とILT-8M2あるいはMOLT-4とHIV感染ILT-8M2の組み合せで生じる合胞体形成に対するウイルス特異抗体の阻害を調べた。その結果、前者の組み合せではHTLV-Iによる合胞体のみができたが、後者の合胞体はHTLV-IとHIV両者によるものであり、抗HTLV-Iあるいは抗HIV特異抗体一方では阻害できず、両者同時に加えてはじめて阻害できた。従って、HTLV-IとHIVは共にCD4陽性細胞に感染するが、レセプターは共有していないことが分かった。 HTLV-Iレセプターに対するモノクロナル抗体を得るために、MOLT-4細胞をマウスに免疫しハイブリドーマを作成し、その上清をHTLV-I合胞体形成試験でスクリーニングしているが、これまでのところ有意に合胞体形成を抑制する抗体はとれていない。同様の試みは現在引き続き進行中である。
|