研究課題/領域番号 |
04670279
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小田切 孝人 自治医科大学, 医学部, 講師 (80177237)
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研究分担者 |
田中 利典 自治医科大学, 医学部, 講師 (30146154)
田代 真人 自治医科大学, 医学部, 助教授 (90111343)
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キーワード | インフルエンザウイルスA型 / 非構成蛋白NS2 / RNAの転写,複製 / 干渉性欠損ウイルス / RNAポリメラーゼ遺伝子 |
研究概要 |
本研究の目的は、NS2蛋白の変異株(Wa-182)を用いてこれまで解析が困難であったNS2蛋白の機能を明らかにすること、さらに干渉性欠損(D1)ウイルスの出現にNS2蛋白がどのように関与しているのかを解明することにある。 1.NS2蛋白によるPAポリメラーゼ遺伝子複製の抑制:NS2の変異株を多重感染させるとPA遺伝子の複製が選択的に抑制される。このゲノム複製の抑制が起こる機序を解明するため、ウイルス感染細胞内に合成されるPA遺伝子に特異的なcRNA、mRNA,vRNAをそれぞれ経時的に定量した。その結果、PA遺伝子の複製はcRNA合成過程で選択的に抑制され、しかもその抑制はPA遺伝子由来のDIRNAが増幅されることによって引き起こされた。一方、野生株ではDI RNAの優先的な増幅もPA-cRNA合成の抑制も全く起こらなかった。このことは、変異株のNS2蛋白はcRNA合成過程でDI RNAを優先的に増幅させる機能を持つことを示唆している。 2.ゲノムの転写、複製の制御:NS2変異株のPA遺伝子のcRNA合成は野生株に比べ早く始まり、逆にmRNAの合成は著しく遅れる傾向が見られた。この現象は、PA遺伝子に限らずPB2ポリメラーゼ遺伝子についても同様に観察された。この事実は、変異株のNS2蛋白はゲノムの正常な転写から複製へのスイッチングを早めていることを示している。 以上の結果から、インフルエンザウイルスの正常なNS2蛋白は、遺伝子の一部を欠落したDI RNAがゲノムRNAより優先的に増幅されないようにcRNA合成過程でその合成を抑制し、ゲノムが正常に複製されるように調節する機能を持つことが初めて明らかになった。さらにNS2蛋白がゲノムの転写から複製への転換に関与していることから、NS2蛋白はウイルス感染によって誘発、活性化されると言われている宿主細胞由来のスイッチング蛋白の作用を制御している可能性があり、NS2蛋白が持つ全く新しい機能の発見が期待される。
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