研究概要 |
示すts256株の変異点を、5.1kbのDNA断片内にまでしぼりこんだ。この断片のDNA塩基配列を野生株とts256株で決定したが、この断片内には3つのオープンリーディングフレームの存在が推定できた。これらはAD169株で既に発表されているUL53,UL54,UL54に対応するものである。なおAD169株との相同性は塩基配列で約98%、アミノ酸配列で99%以上であった。野生株とts256株の塩基配列の比較から、ts256株には2カ所の変異が見いだされた。一つはDNAポリメラーゼ(UL54)内に、もう一つはDNAポリメラーゼに隣接するUL53内に存在した。RNA-RNAハイブリダイゼーションによる結果と、この断片領域のcDNAのDNA塩基配列の結果から、(UL52,UL53)とUL54の転写は異なるDNA鎖からおこなわれていることが明らかになった。クローン化したUL54領域のcDNAのうち2株を用いて組換タンパク質を大腸菌で発現させた。この組換タンパク質はアフィニティークロマトグラフィーで精製を行い、数mgの精製には成功した。ただし、大量培養を行うと産生量が極端に低下してしまい、満足のいく量の精製タンパク質が得られないため、現在、他の高発現ベクターの再クローニングを行っているところである。なお精製した組換タンパク質を使用してモノクローナル抗体の分離を試みているが現在のところまだ成功していない。第2番目の変異点が発見されたことで、UL53の機能に関する作業仮説は最初とは異なるものになるが、この点に関しては今後検討を行いたい。
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