ヒトサイトメガロウイルスでウイルス特異的DNAポリメラーゼに温度感受性(ts)を持つ株、ts256、の分析をおこない、その変異点をゲノムDNA上の5.1kb内にあることを明らかにしてきた。そこで、変異がDNAポリメラーゼの発現にどのように関わっているかを解析するために 1kbの塩基配列を決定し、オープンリーデイングフレーム(ORF)を設定すると同時にts株の5.1kb断片の塩基配列も決定し変異点を同定する などの方向で解析を進めた。 その結果、5.1kbのDNA断片内には3つのORFが含まれており、それらはAD169株ですでに発表されているUL52、UL53、UL54と同一であった。UL54はDNAポリメラーゼ遺伝子と同定されているものである。ただしts256の変異は、UL54内とUL53の2カ所に存在する事が判明した。UL54内の変異は各種DNAポリメラーゼに共通に保存されている領域内にあるため、この変異がDNAポリメラーゼ活性の消失に関係している可能性が高いが、一方、UL53内の変異は、変異を起こした配列がAD169と同一の配列になり、silentな変異である可能性が高い。 しかし、2つの変異が同時に存在する状態では確実な結論は得られないため、5.1kbのDNA断片にsite-directed mutagenesisでts256に存在する変異と同じ変異をそれぞれ導入し、これをもちいて、組換技術で変異をウイルスに導入する実験をおこなっているところである。
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