研究概要 |
インターフェロン遺伝子の発現を制御する転写因子IRF-1及びIRF-2の細胞増殖制御における役割について検討した。まずIRFの細胞周期における発現をNIH3T3細胞を用いて調べた。血清除去によるGl arrest時IRF-2:IRF-1比の減少がみられ、増殖刺激により増加することが明かとなり、IRFの細胞増殖に対する関与が示唆された。そこで、IRF-2発現ベクターを遺伝子導入しIRF-2高発現NIH3T3細胞株を樹立した。得られた細胞株は細胞飽和密度の上昇、メチルセルロースゲル内でのコロニーの形成、ヌードマウスでの腫瘍の形成がみられ、IRF-2がoncogenic potentialを有することが明かになった。さらにこれらの細胞株はIRF-1ゲノム遺伝子導入によるIRF-1高発現によって野生型に復帰し、IRF-1のanti-oncogenic potentialを見いだした。これらの現象は、組み換え体レトロウイルスを用いた遺伝子導入によっても確認された。 さらに、ヒトIRF-1遺伝子が白血病やMDS患者細胞で高率に欠損の見られる染色体5q31.1に位置することを明かとした。そこで染色体分析で5qに異常の見られた白血病及びMDS患者13例のサンプルでのIL-4,IL-5,IRF-1,CDC25C,GM-CSF遺伝子の欠損を検討した。その結果、IRF-1遺伝子のみがすべての症例に一致して欠損していた。更に、1alleleの欠損に加え、残りのalleleにプロモーター部位の欠損が起こり不活化されたIRF-1遺伝子を持つ白血病の一症例を検出した。また、in situ hybridization法によりIRF-1両allele欠損が急性白血病症例に主に観られること見い出した。以上より、IRF-1欠損と白血病、MDS発症の関連が示唆された。 一方、ジーンターゲッティング法を用いIRF-1及びIRF-2ノックアウトマウスをそれぞれ作製することに成功した。今後、個体レベルでの細胞増殖機構の解明に利用できるものと考えている。
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