研究概要 |
インターフェロン(IFN)系における転写活性化因子IRF‐1、転写抑制因子IRF‐2はIFN系全体において重要な役割を果たすこと、さらにNIH3T3細胞を用い、IRF‐1は癌抑制遺伝子、IRF‐2は癌遺伝子として機能し、細胞増殖制御に深く関わることを明らかにしてきた。一方でヒトIRF‐1遺伝子が染色体5q31.1に位置し、白血病/MDS患者で欠損していることを見い出した。 本年度は (1)IRF‐1、IRF‐2欠損マウスをそれぞれ作製し、IRF‐1欠損繊維芽細胞でIRF‐1が癌抑制因子として機能すること、さらに細胞死(アポトーシス)に重要な転写因子であることを明らかにした。 (2)IRF‐1欠損マウスで抗細菌、抗ウイルス作用の低下がみられ、IRFが生体防御に重要な役割を果たすことを明らかにした。さらにIFN-α及びIFN‐γ処理によるIFN誘導遺伝子の発現を調べた結果、IFN誘導遺伝子はその発現がIRF‐1に依存した遺伝子(iNOS遺伝子など)とIRF‐1に依存しない遺伝子(PKR遺伝子など)の2種類に分類されることを見い出した。 (3)ヒトIRF‐1にはalternative splicingによるDNA結合領域欠失変異体が存在し、MDS患者の約20%で正常mRNAがほとんど検出されないことから,この癌抑制遺伝子の新たな不活性化の機構が推測された。 (4)転写抑制因子IRF‐2はカルボキシル末端に塩基性アミノ酸が多く存在しその領域が転写抑制活性に重要であること、さらにその部分が欠損することによりIRF‐2が転写活性化因子として機能しうることを明らかにした。 以上よりIRFは生体防御に重要な役割を果たすユニークな因子であることが明らかとなり、今後IRFの標的遺伝子を検索することにより生体防御機構の分子レベルでの解析を推進できることが期待される。
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