研究概要 |
胸腺細胞でのネガティブ及びポジティブ選択機構を解析するモデルとして、V_<beta>6及びV_<beta>8陽性のCD4^+8^+胸腺細胞を不死化させた系を用いた。これらの細胞はブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB)の存在下で,アポトーシスによる細胞死が観察され,かつ,生残した細胞はCD4単独陽性細胞へと移行し,IL‐2/IL‐4を産生しうるようになるので昨年に引き続き,その誘導条件などを検討した。ネガティブ選択の際,胸腺上皮細胞が抗原提示細胞として働きうるかは論争の的であるが,我々の系では有効であるという結果が得られた。さらにアポトーシスをもたらすシグナル伝達はサイクロスポリンA(CsA)で抑制されるが,Cキナーゼ抑制剤、あるいはチロシンキナーゼ抑制剤ではとくに抑制効果は観察されなかった。 レセプターを介したシグナルでアポトーシスを免れた細胞では表面マーカーの変化をはじめ種々の変化が観察されるので,それらのシグナル伝達についても検討した。CsAの存在下ではレセプターで刺激後すみやかに観察されるCD4抗原のdowm‐regulationは観察されず,CD4単独陽性細胞へと移行していく。これに対してCキナーゼを活性化するとCD4抗原のdowm‐regulationを誘導しうるが,CD4細胞への移行は認められない。なお,CsAの存在下ではIL‐2/IL‐4を産生する能力は獲得されていなかった。一方,チロシンキナーゼ抑制剤の存在下ではCD4細胞への移行もIL‐2/IL‐4産生能力獲得にも影響を及ぼさなかった。種々の変化は胸腺細胞の抗原レセプターを介したシグナルによって誘導されるものと考えられるが,いろいろの変化はそれぞれが異なったシグナル伝達機構を利用している可能性が示唆される。
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