研究概要 |
暴露音は比較的聴力低下を生じやすい音に絞って、つまり4kHzと6kHzの純音暴露をやや慢性的にに実施した。このときにCM,APをまず測定し、この影響の程度を求め、次いでシングルバレル電極によって電気化学的な変動を求めた。引き続いて、ダブルバレル電極を作成し、内リンパのK^+濃度を直接に求めた。コルチ器の有毛細胞の機能低下がCMの変化を生ずるわけであるが、この状況下で有毛細胞のK^+channelの活性の低下により内リンパからK^+の移動が阻害されることを電気生理学に把握することが目的であり、現在ダブルバレル電極法による実験を進めている。WPI社のK^+イオンエクスチェンジャーを使用、その結果4〜6kHzの純音90dB暴露という中等度の音圧でもこの現象が認められた。このことは内耳の音響受傷は音波の物理的影響と内耳血流の阻害等が複雑にからみあった結果と考えられた。つまり蝸牛マイクロホン電位(CM)と活動電位(AP)の低下が認められる時点は騒音負荷が蝸牛の基底膜の強制駆動や交感神経刺激による内耳血流の減少等による有毛細胞の機能低下を示すものであるが、この際に有毛細胞のHairがその剛性を失いそのK^+チャンネルの機能低下により、有毛細胞内へのK^+イオンの取り込みが減少し、これが感覚細胞の亢奮過程を阻害することが示唆された。内リンパ内のK^+イオン濃度は減少しなかったことから上記のことは裏付けられた。 またdouble-barrel electrodeを用い内リンパのNa^+イオンの変動も追求したところ、CM、APおよびEPの変化の認められる際に内リンパNa^+イオンの濃度の上昇が認められなかった。このことは騒音暴露により内耳血管条におけるmarginal cellのNaチャンネル機能の低下を示唆するものである。
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