研究概要 |
虚血により出現し再潅流により消失するポリペプチドの分子量を6%SDSアクリルアミドゲル電気泳動で詳細に調べた結果、90〜98kDaの間に複数のポリペプチドが存在した。97kDaのポリペプチドの含量は虚血前では約8.8%、60分虚血後9.9%、再潅流後7.7%と変化した。一方、分子量65〜70kDaの領域のポリペプチドは虚血後顕著に増加し再潅流でさらに増加した。また、抗HSP70抗体でダブレットとして染色される約97kDa付近の二つのポリペプチドの低分子量側のそれは抗GRP94抗体でも染色された。一方、分子量およそ67,43,および29kDaのポリペプチドは非虚血・虚血群で染色されたが再潅流群では消失もしくは減少した。以上の結果から、心臓の虚血再潅流処理に際して種々の蛋白質が合成・分解されることが示された。 グルコース負荷ラットの部分虚血再潅流肝モデルで、血漿グルコースレベルはa-トコフェロール(a-Toc)前投与群、対照群共に再潅流で上昇し、血漿インシュリンレベルは対照群の再潅流でのみ有意に上昇した。ミトコンドリア(MIT)膜に結合したa-Toc含量は虚血で低下した。MIT機能に関しては、虚血葉で低下した機能を代償して非虚血葉の酸化的リン酸化能が顕著に亢進した。MIT回収率は対照群の再潅流でのみ減少した。MIT呼吸鎖の末端酵素であるチトクロームc酸化酵素の活性は虚血で低下し再潅流で回復する傾向を示した。虚血及び再潅流によるMITの機能の喪失は複合体IIIに先立つ段階で発生した。血漿の過酸化脂質レベルは対照群で再潅流後に有意に高かく、MIT分画の過酸化脂質レベルは対照群で再潅流後に上昇したが、非虚血葉では全く変化はなかった。脂質の過酸化は虚血再潅流障害の一因となったことを裏付けた。以上の結果から、肝臓において虚血障害と再潅流障害が経時的にではなく平行して発生することが示唆された。
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