高血圧の発現に関与する要因について、(1)主として環境要因の検討としての、正常血圧者の7〜8年後の血圧値の追跡調査と、(2)主として遺伝因子の検討としての、2世代間の血圧値の比較の2方向より検討を行なった。 1)正常血圧者の血圧値の追跡調査 1980年代における追跡調査は平成5年度で完了し、現在入力作業を進めている。現在までの分析結果によると、1960年代のコホートでは、肥満と高血圧出現との関連はみられなかったが、1970年代では両者の関連がみられつつある。そして、その背景として、1960年代後半からの農業労働の大巾な機械化による肉体労働の軽減が一因と考えられた。また、心エコー法より算出した心重量の比較的大きい正常血圧者は心重量の小さい正常血圧者に比べその後の血圧の上昇が大きいという成績を得た。 2.秋田農村における2世代間の血圧値の分析 平成5年度まで同定された親子ペアのうち、子-父-母がそろった子35〜49歳180組について分析を行なった結果、親子同一時代の血圧値に関して、息子は父親に比べ、最大血圧値が約10mmHg低値を示し、娘は母親に比べ最大血圧値が約3mmHg低かった。また、息子と父の間の血圧値の相関はみられなかったが、娘と母との間に弱い正の相関がみられた。これは、1960年代から、1980年代にかけての食生活や労働を中心とする環境変化によって血圧値の低下が特に男子において強く起ったことを示している。息子と父親の間に血圧値に相関がみられなかったことは親子間の遺伝的影響力が環境変化に比べて弱いことを示唆している。
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