研究課題/領域番号 |
04670327
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 勝敬 東京大学, 医学部(医), 助手 (80157776)
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研究分担者 |
荒記 俊一 東京大学, 医学部(医), 教授 (00111493)
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キーワード | 手根管症候群 / 電気生理学的診断法 / 神経伝導速度分布(DCV) / 手指作業者 / 無症候性影響 / 振動工具作業者 / キーパンチャー |
研究概要 |
頚肩腕障害の内、手根管症候群は手根管屈筋腱鞘炎のために正中神経が手根管内で絞扼されて起こり、産業医学、整形外科および内科の広範な領域で遭遇する重要な疾病概念である。特に、産業医学領域では手指作業に起因して手根管症候群が発生しやすいことが指摘されている。 本研究の目的は、手根管症候群の早期診断技術の開発と産業医学領域での適用限界を検討し、その応用として職場における手根管症候群の発生頻度を調査することにある。この目的を達成するために、前年度に神経伝導速度分布(DCV)測定法を改良し、コンピュータ解析による単一神経活動電位波形の変化として視覚的に捉えられるようにした。また、この新しいDCV解析プログラムを用いて15名の健常者で測定を行ない、数理モデル上妥当性があることを確認した。 当該年度は、作業者で実際に測定を行ない、無症候性(Subclinical)の手根管症候群の発生頻度を検討した。 1)臨床医学的に拇指球の筋萎縮のない振動工具(主にチェーンソー、削岩機)作業者12名(年齢、40〜75歳)で正中神経のDCVを測定した。これら作業者の多くは白指症の経験を持っていたが、手根管症候群の自覚症状(拇指と示指のつまみ動作ができない、物を持っていても時々落とすことがある、等々)は訴えていなかった。この内、3名で単一神経活動電位波形の変化が見られた。 2)同様に、臨床医学的に拇指球筋萎縮のない女子キーパンチャー27名(年齢、20〜37歳)で正中神経のDCVおよび知覚神経伝導速度(SCV)を測定した。これらの作業者は1〜17年間、毎日約7時間のデータ入力作業を行なっていた。これらの作業者のうち10名で、手根管部前後のSCV比である{指〜手関節部SCV}/{指〜手掌中央部SCV}の値が90%以下(75.6〜89.7%)を示した。これらの作業者は糖尿病、妊娠、手首の骨折等々の経験(交絡要因)がなかったことから手根管部の軽度絞扼による神経伝導遅延が推定された。 本研究により、無症候性(Subclinical)の手根管症候群が産業医学領域でかなり高頻度に発生している可能性が示唆された。 今後、これら2年間のデータをより詳細に検討した上で関連する学会、雑誌等で研究発表をする予定である。
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