研究概要 |
トリクロサンの活性汚泥に対する毒性を酸素吸収量で検討し、その最大無作用濃度は20mg/〓であった。この値はヘキサクロロフェンの最大無作用濃度6mg/〓より高い値であり、その毒性は弱いが、その他の消毒薬より1桁低い値であり、その毒性が強いことを明らかにした。 医療系排水中などのトリクロサン濃度を定量するために従来法に変えて高感度質量分析法を確立した。本法はエキストレルートカラムに変えてセプパックC_<18>カートリッジを用いて1〓通水し,有機溶媒で抽出、精製、誘導体化後、マスフラグメントグラフィーで定量する方法である。医療系排水中のトリクロサン濃度は数百ng/〓-数ug/〓であり、本学附属病院で使用量の多い塩化ベンゼトニウムなどの第四級アンモニウム塩濃度(数mg/〓)に比べて3-4桁低い値であった。この値はトリクロサンの使用量を反影している結果である。医療系排水処理施設における原水、生物処理水、最終処理水中のトリクロサン濃度はいずれも検出限界以下であった。これらのことはトリクロサンが活性汚泥によって吸着または分解された結果であると推察される。 トリクロサン(2,4,4'-トリクロロ-2'-ハイドロオキシジフェニルエーテル)の活性汚泥による代謝については、2'位の水酸基のエステル化またはグルコン酸、硫酸、グルタチオンなどの抱合体化、ベンゼン環の過酸化物(パーオキサイド)化、それに続く水酸化、水酸基のエステル化など、および2,4,4'位の塩素の脱塩素化である。活性汚泥処理の実験室内装置を用いてトリクロサンの主要代謝物を高速液体クロマトグラフィーを用いて単離後、質量分析法で構造解析した結果、2'位の水酸基のメチルエステル化および2,4,4'位の塩素のいずれか1つの脱塩素化が確認された。
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