研究概要 |
平成4年度は補体蛋白質のC3型,C4型およびHF型,そして血液凝固線溶系因子のATIII型の解析を行った。C3型については,日本人をはじめとする蒙古系人種において,変異型の出現頻度は低いにもかかわらず,種類の多いことが特徴的である。今回も我々は通常の電気泳動法使用して,日本人から新たに2種類のC3変異型を検出した。これらの変異はC3分子のどの部分の変化で生じているかを調べるために,蛋白質解酵素処理,SDS電気泳動法およびエレクトロブロッティング法を用いて検索しているが,β鎖上のアミノ酸置換に起因している可能性が示唆された。C4型については,試料の種類(血清,EDTA血漿,ヘパリン血漿,クエン酸ナトリウム血漿およびEDTAを加えた血清)と,それらを処理する酸素の種類を検討した。その結果,EDTA血漿またはヘパリン血漿をカルボキシペプチターゼCおよびシアリダーゼで同時に処理し,電気泳動を行ったのち免疫固定法でC4パターンを観察すると,C4アロタイプは明確に分類できることがわかった。また保存状態の良い血清からでもアロタイプ分類は可能であった。これらの知見は1992年10月の日本法医学会中四国地方会で発表した。現在,C4変異型をパパインやトリプシンで処理した試料を用い,SDS電気泳動法とエレクトロブロッティング法とで検出する方法を検討している。HF型については,血清中のHF蛋白と抗HF抗体との複合物から変異型を検出する方法を試みた。本法によるデータと従来の等電点電気泳動法によるデータとは相違のみられる点があるので,さらに検討を続けている。ATIII型に関しては,シアリダーゼ処理試料を用いることにより数種類の変異型が検出できた。この成果は現在論文にまとめているが,第3回日本臨床化学会四国支部会総会でも発表を予定している。
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