強皮症患者血漿エンドセリン-1(ET-1)の臨床的意義の研究:強皮症の主症状としてレイノー現象がある。これは、末梢血管が一時的に収縮するための症状であり、その出現には血管収縮作用を有するET-1が関与していると考え、まず、患者血漿ET-1濃度を測定し、様々な臨床病態との関係を明らかにした。ET-1の測定は、サンドイッチ型の酵素免疫法によった。強皮症患者31例の内訳は、びまん型が18例、限局型が13例である。正常コントロール25例のET-1濃度は平均1.31pg/mlであるのに対して、びまん型強皮症症例における濃度は平均2.16pg/ml、限局型強皮症症例における濃度は平均1.53pg/mlであり、強皮症特にびまん型ではET-1が上昇していた。強皮症では、肺線維症がおこり肺機能が低下することが知られているので、肺機能の中で肺動脈の機能を敏感に反映するDLcoを測定し、血漿ET-1との相関を調べた。その結果、DLcoと血漿ET-1濃度とは逆相関を示した。次に多変量解析を用いて、血漿ET-1濃度と、皮膚硬化の程度および様々な肺機能のパラメーターとの相関関係を調べた。皮膚硬化の程度・DLco・肺機能の一つであるFVC・肺線維症の持続期間・エックス線所見上の肺線維症の有無の偏相関係数は、それぞれ、0.78、0.76、0.67、0.75、0.06であり、皮膚硬化の程度・肺機能の中でDLcoは血漿ET-1と最も強い相関を示した。以上の結果から、血漿ET-1の測定は、強皮症患者の生命の予後を予知できると考えられた。 強皮症の炎症反応におけるET-1の意義の研究:このような強皮症におけるET-1の意義が、どのような炎症学的現象によるものなのかを明らかにするために、末梢血白血球と内皮細胞の機能に及ぼすET-1の影響を検討中である。
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