1.強皮症の臨床病態におけるエンドセリン-1の意義 われわれは、まず、強皮症の臨床病態においてエンドセリン-1が何等かの意義を有するのではないかと考え、強皮症患者の血中エンドセリン-1値を測定した結果、上昇していることを見いだした。さらに、強皮症患者の様々な臨床症状と血漿エンドセリン-1値との関係を調べた結果、血漿エンドセリン-1値は皮膚硬化の程度と相関関係を示し、肺臓の血管の初期病変の指標であるDLcoと逆相関の関係を有することが明らかになった。このことから、血漿エンドセリン-1値は強皮症の予後の判定に役立つ重要なパラメーターであることを明らかにした。 2.強皮症の炎症反応におけるエンドセリン-1の意義 強皮症の炎症反応においてエンドセリン-1がどのような意義を有するのかを明らかにするために、末梢血単球・好中球による炎症惹起物質(ロイコトリエンB_4)の産生能と、炎症反応の初期の現象を反映する好中球-内皮細胞付着反応を指標として、これらに対するエンドセリン-1の影響を調べた。その結果、強皮症患者の単球・好中球におけるエンドセリン-1のロイコトリエンB_4産生能増強作用が、健常人のそれより低下していること、さらに、好中球-内皮細胞付着反応に対しては何等の作用も及ぼさないことを見いだした。 これらの所見から、強皮症においては血管内皮細胞からのエンドセリン-1の産生は高まっているが、エンドセリン-1は炎症反応の惹起に直接は関与していないことが推察された。血管内皮細胞や炎症細胞によるエンドセリン-1の産生とその調節機構の解明が、強皮症の炎症反応におけるエンドセリン-1の役割の解明に役立つものと考えられた。
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