細胞外マトリックスによる血管平滑筋細胞フェノタイプ形成と遺伝子発現の変動

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670371
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 村野 俊一 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (50231634)
• 研究分担者: 森崎 信尋 医学部, 附属病院, 講師 (40174411)
• キーワード: 血管平滑筋細胞 / フェノタイプ変換 / バルーンカテーテル / tumor necrosis factor-α / PDGFβ-レセプター

研究概要

(1)昨年度に施行した基礎実験の結果より家兎の大動脈に対してバルーンカテーテル法により内膜剥離術を施行し、術後2日、5日時点にて大動脈を採取してこれよりexplant法にて培養平滑筋細胞を調製した。この細胞について、対照となる内膜剥離を行なわなかった大動脈より得られた細胞とともにoutgrowth率、acetylated LDLの取り込み、およびDiI-LDLの取り込みを観察し、内膜剥離を行なった細胞群で合成型へのフェノタイプの変換が起こりつつあることを確認した。さらにこれらの細胞よりRNAの採取を行ない、そのクオリティーについての確認を行なった。現在得られたこのRNAより家兎大動脈中膜および内膜平滑筋細胞のcDNAライブラリー作製の途中であり、ライブラリーの完成を待って内膜剥離後の経時的変化が平滑筋細胞の遺伝子発現をどのようにかえていくのかについてdifferential screeningなどの手段を用いて明らかにしていく予定である。
(2)分担研究者の森崎らは平滑筋細胞のフェノタイプの変換の際に周囲の細胞が分泌するサイトカインや周りに存在する細胞外マトリックスと平滑筋細胞の相互作用について検討を進めた。その結果tumor necrosis factor-αが平滑筋細胞のフェノタイプの変換を促進することを見出している。さらに糖尿病の実験動物の血管平滑筋細胞に注目して糖尿病の病態では平滑筋細胞のPDGFβレセプターの発現が増加してPDGFによる増殖刺激に対する反応性が亢進していることを見出している。今後細胞外マトリックスと平滑筋細胞のフェノタイプの相互作用についても検討を進めていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Shunichi Murano et al: "Characteristic features of long-living patients with familial hypercholeste nelemia in Japan" J.Am Geriatr.Soc.41. 253-257 (1993)
• [文献書誌] Mikihiko Kawame et al: "Diabetes mellitus induces accelerated growth of aortic smooth muscle cells:association with overexpression of PDGFβ-receptors" Eur J.Clin Invest. 23. 84-90 (1993)
• [文献書誌] Seijiro Mori et al: "Decreased expression of the platelet-derived growth fuctor β-receptor in fibroblasts from a patient with Werner's syndrome" Eur J Clin Invest. 23. 161-165 (1993)
• [文献書誌] Noriyuki Koyama et al: "Purification and characterization of an anti crine migration factor for vascular smooth muscle cells(SMC),SMC-derived migration factor" J Biol Chem. 268. 13301-13308 (1993)
• [文献書誌] Nobuhiro Morisaki et al: "Tumor necrosis factor-α can modulate the phenotype of aortic smooth musch cells" Scand J.Clin Lab Invest. 53. 347-352 (1993)
• [文献書誌] 村野俊一他: "動脈硬化治療薬としてのカルシウム拮抗薬" CLINICAL CALCIUM. 4. 82-84 (1993)
• [文献書誌] Nobuhiro Morisaki et al: "Vitamin E(Vitamin E and atherosclerosis:From the view point of arterial wall all function)" Japan Scientific Societies Press(Tokyo)& Karger(Basel), 368 (1993)