研究概要 |
本年度は,ICAM-1発現増強因子の分離,精製及び遺伝子クローニングを試みた。ICAM-1発現増強因子はヒト急性白血病株CEMを無刺激下で48時間培養,これを硫安塩析し,さらに濃縮することにより得た。この粗分画は,臍帯脈由来ヒト血管内皮細胞(HUVEC)のICAM-1を強く誘導すると共に,VCAM-1,ELAM-1の発現をも増強したため,この因子をcell adhesion molecule regulatory factor(CAM-RF)と命名し,さらにその分離,精製を試みた。CAM-RFの物理生化学的性状は,63℃,30分の熱耐性,pH2の酸耐性,トリプシン処理に部分感受性を示した。中和実験の結果から,CAM-RFはIL-1,TNFα,γ-IFNと異なる物質であり,ゲル濾過法からは分子量約5万であることが推測された。CAM-RFはHUVECのみならず,滑膜細胞のICAM-1発現をも強く誘導した。等電点電気泳動法からは,pIは7と4前後であり,HPLCにおいて2つのピークがみられた。しかし,この方法でCAM-RFのアミノ酸解析をするためには大量の培養液が必要となるため,CAM-RFの遺伝子クローニングを試みた。すなわち,現在,CEMより動物発現ベクターを用いてcDNAライブラリーを作成し,COS細胞にトランスフェクトさせ,その培養上清のICAM-1発現誘導活性をスクリーニングすることにより,ICAM-1の遺伝子のクローニングを行っている。その結果,現在までのところ,ICAM-1発現増強活性を有するポジティブクローンを数種得ており,現在,これを確認中である。今後,このポジティブクローンを用いてさらに遺伝子クローニングを進める所存である。
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