研究概要 |
本年度は、ヒトT細胞白血病細胞株CCRF-CEM(以下CEMと略)の培養上清中に存在するICAM-1分子発現増強をする液性因子(CAM-RF)の解析をさらに行った。その結果、本因子の分子量は約5万、等電点は7.2であり、血管内皮細胞上のICAM-1のみならずVCAM-1及びEセレクチンの発現をも増強することがcell-ELISA及びノーザンブロット解析法などより明らかとなった。またモノクローナル抗体を用いた阻害実験の結果からは、CAM-RFはIL-1,TNFα,IFNγなどのICAM-1発現誘導活性を有するサイトカインとは明らかに異なる新たなサイトカインであることが明らかとなった。さらに、CAM-RFはCEMと血管内皮細胞との細胞接着を用量依存的に増強した。すでに、CEMは転移性の強い悪性リンパ腫細胞から樹立した細胞株であり、このような強い転移能の一部が、CAM-RFによって担われている可能性が推測された。 CAM-RF遺伝子クローニングに関しては、現在、CEMより作製したcDNAライブラリーにりスクリーニング中である。cDNAをCDM8のBstX1部位に挿入し、これを用いて大腸菌をトランスフォームする。さらにこれよりプラスミドDNAを回収し、COS細胞へトランスフェクトし、その培養上清のICAM-1発現誘導活性を指標としてスクリーニングを行う。今後、ポジィティブクローンを得て、その塩基配列を決定する予定である。
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