虚血性急性腎不全におけるエンドセリン(ET)の役割をみる目的で急性腎不全での腎内ETの測定及びET抗体、ET拮抗薬の腎機能に及ぼす影響を検討した。 急性腎不全はSDラットの左腎動脈を60分間閉塞し作成した。閉塞解除48時間後に腎のイヌリンクリアランス(Cin)、腎内ET濃度を測定した。この際右腎を摘出した群、偽右腎摘出手術群と非虚血対照群で比較した。 Cinは虚血により右腎摘群で対照群の24.2%へ低下したが、偽手術群ではその低下はさらに強く5.1%であった(p<0.05)。組織学的にも偽手術群で右腎摘群に比し尿細管壊死が著しかった。腎皮質内ET濃度は虚血により対照群に比し有意に上昇したが、偽手術群(924±241pg/g tissue)では右腎摘群(420±38pg/g tissue)に比し有意に高値であった。(p<0.05)。尿中ET排泄量は右腎摘出群では偽手術群に比し有意に大であった。 腎内ET濃度の差がCinの差の原因になっている可能性を検討するため、ET抗体(AwETN_<40> 3.3nmol/kg)を虚血前、血流再開5分前、再潅流1時間後および5時間後の計4回投与したが虚血48時間後のCinに影響を及ぼさなかった。さらにET-A受容体拮抗薬であるFR139317を虚血24時間前よりosmotic minipumpを用いて50mg/kg/day、3日間皮下投与した(別の実験で、この量のFR139317が0.08-0.4nmol/kgのET1静脈内投与による昇圧を抑制することを確認してある)が、右腎摘群、偽腎摘群とも虚血48時間後のCinの改善をみかなった。 以上の結果は、虚血性腎不全のCinの低下にET-A受容体を介するETの関与は少ないと考えられる。
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