研究概要 |
本研究は急性腎不全の発症に対する血管作動性物質の関与と、回復過程への成長因子の関与を検討するものである。 平成4年度において、エンドセリンが虚血性急性腎不全の発症に中心的役割を果たしているとは考えにくいという結果を示したが、本年度はトロンボキサンの関与について検討した。平成4年度研究計画書に述べたように、左腎動脈の60分完全閉塞による急性腎不全は右腎を摘出しておいた場合に軽減されること、その際虚血後の左腎内のトロンボキサンB2の増加が軽減されることを我々は既に報告している。今回トロンボキサンB2の合成阻害薬であるOKY046(100mg/kg/day)を用い、虚血性急性腎不全が軽減されるか否か検討した。その結果、トロンボキサンB2合成阻害薬の投与により、尿量、腎血流量、糸球体濾過値の増加を認め、虚血性急性腎不全の発症にトロンボキサンが関与する可能性があることが示された。また、回復過程に対する成長因子の関与を検討する目的で、右腎摘出をした場合としなかった場合とで虚血後の細胞増殖の程度が異なるか否かを検討した。左腎を60分間閉塞し、閉塞解除後30分5、24、48、96時間の時点で左腎を摘出しホルマリン固定後、proliferating cell nuclear antigen(PCNA)の発現を免疫染色を用いて検討した。その結果、虚血後24時間の時点でのPCNA発現は右腎摘出群で大であり、右腎摘出群で細胞増殖が促進されていることが示唆された。現在、動物の数を増加させ、この結果の確認を行っている。細胞増殖にIGF-1,EGF,TGF-βなどが関与するかを検討する目的でジゴキシゲニンをラベルしたプローベを用いてmRNAMの検出を行っているが、従来のアイソトープをラベルしたプローベと異なり、条件設定が困難であり、現在その条件設定を急いでいる段階である。
|