ヒト単球遊走因子(hMCP-1;human monocyte chemoattractant protein-1)は単球特異的遊走因子で、炎症、生体防御に於て極めて重要な働きを持ち、慢性関節リウマチ、間質性肺炎等の疾患に於てその発現異常が報告され、疾患におけるその役割について興味が持たれている。そこでhMCP-1 receptor cDNAのクローニングを最終目的として、ligandとしてのhMCP-1の特色を検索するため、以下の実験を行なった。 1)バキュロウイルスを用いたhMCP-1の発現系の確立 細胞株A172よりcDNAを作製、これに対してhMCP-1cDNA5'側、3'側に設計されたプライマーを用いてhMCP-1cDNAを増幅、これをトランスファーベクターpJVP10Zのポリヘドリンプロモーター下流にクローニング、バキュロウイルスゲノムDNAと共に昆虫細胞Sf21に導入、相同組換により産生されるリコンビナントバキュロウイルスを回収、これをSf21に感染させ、48時間後に最も高いhMCP-1産生能を認めた。 2)hMCP-1の生物学的活性及び翻訳後蛋白修飾の解析 hMCP-1の単球遊走能をBoyden chambar法で解析し、本発現系で得られたhalf-maximal activityが、従来報告されているそれよりも低いことが判明した。そこでこの原因を解明するため、蛋白精製及びN末端解析を行なった結果、hMCP-1にはその分泌の際にN端側23塩基がシグナルペプチドとして切除されると報告されているが、本発現系ではさらに6塩基が切除されていることが判明した。 hMCP-1の糖鎖修飾を解析した結果、本発現系で得られたO結合型の糖鎖修飾は報告されているhMCP-1と同様にGalβ1-3GalNACであるが、シアリル酸の重合が認められない点で異なることが判明した。
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