研究概要 |
【目的】抗Ku抗体は強皮症-多発性筋炎重複症候群患者に特異的に見いだされる自己抗体である。その対応抗原(Ku抗原)は70kD/80kDのヘテロ蛋白二量体で,2本鎖DNA末端に結合することを明らかにしてきたが,その生物学的機能については不明であった。近年,Ku抗原がDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の活性調節因子である可能性が報告され,さらにはKu抗原がDNAの修復や組換えに関与する可能性も報告されている。本年度は,Ku抗原の生物活性を追求するために,DNA-PKとKu抗原の関連性について検討した。 【方法】1)HeLa細胞を^<35>Sメチオニンで標識し,その抽出物を抗Ku抗体結合プロテインAセファロース粒子と種々の塩濃度下で反応させ,免疫沈降物をSDS-PAGE分画後,オートラジオグラフィで検出した。2)精製DNA-PKとその基質(GAL4-CTD融合蛋白)をDNAおよび精製Ku抗原存在下で反応させ,in vitroリン酸化反応を検討した。ここに抗Ku抗体陽性患者血清を加えてDNA-PKの酵素活性への影響を検討した。 【結果】1)抗Ku抗体は高塩濃度化(0.5M NaCl)ではKu蛋白(p70/p80)のみを沈降したが,生理的塩濃度下(0.15M NaCl)ではKu蛋白に加えて350kDの大分子量蛋白を同時に沈降した。この蛋白はDNA-PK(p350)に対する家兎免疫血清で認識されることから,DNA-PKの触媒サブユニットp350自身であることが確認された。2)DNA除去後のHeLa細胞抽出物には,Ku蛋白/p350複合体は形成されなかった。しかしここに2本鎖DNAを加えるとKu/p350複合体が再び形成された。3)DNA-PK基質であるGAL4-CTD融合蛋白のin vitroリン酸化反応は抗Ku抗体の存在によって特異的に阻害された。 【結論】Ku抗原はp350サブユニットとともにDNA-PKホロ酵素を形成し,Ku抗原はDNA-PKの活性化サブユニットとして働く可能性を示唆した。
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