研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は各種臓器に多彩な症状を現す全身性自己免疫病の原形的なもので,SLE患者およびループスモデルマウスではTリンパ球によるインターロイキン2(IL2)の産生は著しく低下しておりSLEの病態形成に関与していると考えられている。研究代表者は昨年度,ヒトSLE患者では血中のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)濃度が低下していることを見出し,さらに正常Tリンパ球に対するDHEAの作用機序を解析し報告した。本年度はSLE患者Tリンパ球によるIL-2産生不全がDHEA濃度の低下によるものかをあきらかにするため,SLE患者Tリンパ球をDHEAで前処理するにより患者Tリンパ球のIL-2産生不全を是正することが可能であるのか検討した。その結果,SLE患者Tリンパ球のIL-2産生不全10^<-9>MのDHEAで前処理するにより改善することが明らかになった。DHEAに反応してIL-2産生の増強を認めるのはCD4陽性T細胞であり,CD8陽性T細胞ではあまり影響を受けなかった。さらにIL-2産生の増強はメッセンジャーRNAレベルで起こっていた。一方,DHEA処理は,B細胞の分化を誘導するIL-4とIL-6の産生には影響せず,SLE患者に実際に投与してもSLE患者B細胞によるポリクローナルな免疫グロブリン産生は増悪させないことが示唆された。この成績から血清DHEA濃度の低下がSLE患者Tリンパ球のIL-2産生不全の少なくとも一因となっており,さらにDHEAがSLE患者Tリンパ球のIL-2産生不全を是正することでSLE患者治療にDHEAが応用可能であることを示唆する。
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