研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は全身性自己免疫病の原形的なもので,SLETリンパ球によるインターロイキン2(IL2)産生は著しく低下しておりSLEの病態形成に関わっていると考えられている.デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は副腎が産生するステロイドホルモンで,性ホルモン合成系の中間生成産物である.研究代表者は正常者T細胞に対するDHEAの効果を検討し,DHEAは正常者T細胞に作用して抗原刺激によるIL-2産生を増強させることを見出した.実際DHEA/DHEAレセプター複合体はIL-2プロモーター/エンハンサー領域の-222から-127bpの領域に作用してIL-2遺伝子の転写を促進し,IL-2メッセンジャーRNAの増加をもたらし,IL-2蛋白の産生増加が起こることが明らかになった.一方,ヒトSLE患者では血中DHEA濃度が発病初期から低下していることを見出した.SLET細胞によるIL-2産生不全がDHEA濃度の低下によるものかを検討した.SLET細胞のIL-2産生不全は正常者の血中濃度である10^<-9>MのDHEAで前処理するにより改善した.DHEAに反応しIL-2産生増強を認めるのはCD4陽性T細胞であり,CD8陽性T細胞ではあまり影響を受けなかった.SLET細胞のIL-2産生増強はメッセンジャーRNAレベルで起こっていた.一方,DHEA処理は,B細胞の分化を誘導するIL-4とIL-6の産生には影響せず,DHEAがSLE患者B細胞のポリクロナールな免疫グロブリン産生は増悪させないことが示唆された.この成績から血清DHEA濃度の低下がSLE患者T細胞のIL-2産生不全の少なくとも一因となっており,さらにDHEAがSLE患者Tリンパ球のIL-2産生不全を是正することでSLE患者治療にDHEAが応用可能であることが示唆された.
|