研究概要 |
1)試験管内培養の観察から、骨髄腫細胞のうち増殖を示す細胞は骨髄ストローマ細胞から離れて存在し、増殖性の乏しい分画がストローマ細胞に付着した。形態学的には、付着細胞は成熟型であり、非付着細胞は幼若型を示した。このことは、骨髄腫細胞とストローマ細胞の接着は骨髄腫細胞の増殖性を高めるのではなく、アポトーシスを防いでいるものと推測された。 2)樹立11株の骨髄腫細胞の接着分子発現に関しては、VLA-4,LFA-3,ICAM-1,CD44の発現が全株にみられ、LFA-1,N-CAM,CD49e,CD61,LAM-1の発現が一部の細胞に発現していた。これらの分子と骨髄腫細胞のストローマ細胞への付着及びアポトーシスとの関係を現在追求中である。 3)樹立骨髄腫細胞の10株のうち6株にFas抗原の発現が認められ、Fas陽性細胞株6株のうち1例にのみ抗Fas抗体によるapoptosisが観察された。Apoptosisはnuclear fragmentationの光顕的、電顕的観察及びDNA fragmentationにより確認された。Fas抗原発現の有無はIL-6依存性細胞、IL-6非依存性細胞のいずれにも見られ、特別な傾向は示さなかった。検索した癌遺伝子に於ては、RAS遺伝子のpoint mutationが3株に、c-myc overexpressionが5株に、bcllのoverexpressionが1株に見られた。bcl2は蛋白発現のレベルで観察されたが、被験12株のうち11株に発現が見られた。しかし、Fas抗体でapoptosisを起こす細胞株ILKM3のbcl2発現は乏しいものであった。以上の事を考慮に入れると、抗Fas抗体でapoptosisを起こす細胞株ILKM3と他の細胞株の相違点はFas抗原、Myc抗原は充分に発現しているにも拘わらず、ILKM3においてbcl2の発現が乏しいためと考えられた。この点は更に検討対象数を増やし、研究を進めたいと考えている。
|