1.たんぱく尿のモデル系としての培養糸球体上皮細胞 抗ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)抗体投与による蛋白尿の実験モデルの標的となっている細胞は糸球体上皮細胞である。この蛋白尿の機序を培養細胞を用いて解析するにはDPPIVを発現している糸球体上皮細胞が必要であった。これまでも申請者は培養糸球体上皮細胞を用いて研究を行ってきたが、その細胞はDPPIVをごくわずかしか発現していなかった。そこで、今回はDPPIVを多量に発現している培養糸球体上皮細胞を探索し、その継代培養(GEC/H)に成功した。次に、抗DPPIV抗体のGEC/Hに対する影響を見る最初の実験として、GEC/Hの細胞接着を調ベた。GEC/Hをあらかじめ抗DPPIV抗体とプレインキュベーションし、これをコラーゲンコートしたシャーレにまいたところ、抗体を加えていないものに比ベ細胞の接着が抑制された。現在さらに、GEC/Hのバリアー能に対する同抗体の影響を調ベている。糸球体上皮細胞のバリアー能に対するIL-1の影響を調ベたが、有意な変化は観察されなかった。 2.糸球体上皮細胞と血管内皮細胞との比較 糸球体上皮細胞のバリアー能との比較のために、ラット大動脈血管内皮細胞(RAEC)の培養を行いそのバリアー能を測定した。その結果、コンフルエントになったRAECはFITC-デキストラン(MW:35.6kD)に対してバリアー能を示した。しかし、その程度はGECに比ベて弱く、GECが0.1%/4h以下の漏れしか示さないのに対し、RAECは3-4%の値を示した。またRAECの系に腫瘍壊死因子(TNF)を加えると、そのバリアー能は低下した。
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