コレステロール胆石の生成は胆汁中からのコレステロール結晶析出とその成長によるが、胆汁中アポ蛋白Aはそれらを抑制することが知られている。本研究は胆石中アポ蛋白Aについて各種免疫生化学的手法を用い、分子構造レベルまで追求し、胆石生成メカニズムを新しい観点から解明することを目的とした。研究計画に基づき下記の成果を得た。 1.コレステロール胆石中アポ蛋白Aの生化学的特性の検討 胆石中アポ蛋白Aを分離精製後、各種免疫学的手法を用いて分析を行い、その結果胆石中アポ蛋白Aの生化学的特性は胆汁中のそれと類似することを明らかにした。 2.コレステロール胆石中アポ蛋白Aの定量 我々はアポ蛋白A1測定用高感度サンドウィッチ型ELISA法を開発し胆石中アポ蛋白A1の含有量を検討した。その結果、胆石中アポ蛋白A1含有量は微量であった。その一方胆汁中アポ蛋白A1濃度は胆汁中コレステロール濃度と正相関があり、胆汁コレステロール過飽和に傾くとアポ蛋白A1が分泌される可能性を明らかにした。 3.コレステロール胆石中アポ蛋白Aの機能に関する検討 胆石からアポ蛋白Aを分離精製中で研究は継続中である。 4.コレステロール胆石中のアポ蛋白Aの形態学的検討コレステロール胆石の胆石薄切切片を免疫組織染色して、アポ蛋白A1、アポ蛋白A2の存在を証明した。しかもこれらがコレステロール結晶間にサンドウィッチ状に介在していることを明らかにしたが、本所見は胆石形成過程でコレステロール結晶の析出が非連続的に生じていることを示している。 本研究はコレステロール胆石が促進因子(コレステロール過飽和胆汁)と抑制因子(アポ蛋白A)のバランスの上に立って成立していることを証明した点で重要である。
|